私の拾った子犬


大学2年生のとき、私は硬式テニス部はやめてしまったけど、毎朝近くの公園までジョギングをしてました。公園の池のそばで体操をして、池にいる白鳥やカモを眺めて、またアパートまで走って帰るのです。ある夏の朝、公園に入ると、「キャンキャン」「クンクン」不安げに鳴いてる子犬がいました。周りには誰もいなくて、私が近寄ると、その子犬は必死に逃げるようなそぶりをするんですが、生まれて間もないせいか足がしっかりしてなくて、逃げられない感じでした。私は「怖くないよ」って言って、子犬を抱っこしました。子犬の体は震えてました。私はかわいそうで、ほっとけないので、とりあえずアパートに連れて帰ることにしました。子犬を抱いてゆっくりゆっくり歩いてると、いつの間にか子犬は眠ってました。安心したんだと思います。かわいいと思いました。アパートに帰って、ドアのすぐそばに入れてあげて、お皿に牛乳を入れてあげると、少し飲んだと思います。そのあとまた眠ってました。アパートでは飼えないので、実家に連れて帰ることにしました。

子犬を大きめの紙袋に入れて、各駅停車の電車で連れて帰りました。新幹線だと車掌に気づかれる気がしたので。紙袋の中でときどき「クンクン」鳴くので、他の乗客には気づかれて、でも「かわいい〜」って言ってくれて、そこから会話がはずんで、とても楽しい旅になりました。

子犬1

子犬2

子犬3

子犬の名前は「リリ」って付けました。女の子でした。親には負担をかけてしまったけど、かわいいので、親も楽しんで世話をしてくれました。私は帰省するたびに、リリをつれて、近くの大きな川の河原に散歩に行きました。河原でひもをはずしてやると、リリは川で泳いでるカモの親子を見つけて、川の中にじゃぶじゃぶ入って行ったりして、好奇心いっぱいで、楽しそうでした。一度、リリを車(助手席の足元)に乗せて河原に行こうとしたら、怖がっておもらししてしまいました。そしてリリは、私が社会人になったその年、フィラリアにかかって、どんどん弱って、私が東京で働いているうちに死んでしまいました。4年の短い命でした。

リリのことはかわいがってたはずなのに、なぜかよく思い出すのは、私がリリを怒ってるシーンなのです。私が散歩の途中で、リリのひもを離してしまって、リリが道に飛び出してしまったのです。私はそのときリリは車に引かれたと思いました。でも車がクラクションを鳴らして止まってくれて、私は車の人にあやまったあと、リリを怒って、ひもをつかまえて、グイって乱暴に引っ張ったのです。そしたらリリは怯えたように私を見ました。その表情が今も頭から離れないのです。ひもをしっかり持ってなかった私が悪いのに。私はそのシーンを思い出すたびに、リリがかわいそうで、「ごめんね、リリ」ってつぶやくのです。涙が出ます。天国で幸せに暮らしてるかな。


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