三毛猫ちこ


新婚の父と母は三毛猫を飼っていました。
「ちこ」と名付けてかわいがっていたそうです。

ある日、私が生まれることになりました。
「飼い猫は赤ちゃんをかじることがある」って誰かに言われて、
両親はちこを捨てることにしたそうです(ひどいT_T)。

車で川の土手に置いてきたら、数日後、ちこは家に戻ってきました。
だから今度はもう少し上流の土手に置いてきました。
そしたらまた戻ってきました。
だから今度はだいぶ離れた山のほうに置いてきたそうです。
そしたらもう戻ってきませんでした。

私が小学生のとき母が教えてくれました。

そのことをさっきトイレの中でふと思い出しました。
小学生のときはそうでもなかったのに、今思い出したら泣きそうになりました。
ごめんね、ちこ。どこかの猫は赤ちゃんをかじったのかもしれないけど、
ちこが私をかじるとは限んないのに。

私はちこと仲良しになりたかったよ。
私の小さな手で、ちこの顔を触ったり、
しっぽをつかんだりしたかったよ。
私が「ちこー」って呼んだら、
ちこはたぶん「にゃー」って私にすり寄ってきてくれて。
私はちこのことぎゅって抱きしめたかったよ。


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