切ない嘘をついては 言い訳を飲み込んで 果たせぬあの頃の夢はもう消えた (「言葉にできない」(オフコース)より) 社会人になってもわたしは 出版社に土日を使って描いた 漫画(短編)を持ち込んで いました。でも自分の中 ではわかってたんです。 わたしに漫画家になる 能力はないことを。 デッサン力もまるで ありませんでした。 おふざけのシーンでは デフォルメが使えるので、 それを何とかごまかせても、 シリアスなシーンになると、 リアルに描く必要があるので、 かなりのデッサン力が必要です。 女の子と男の子が手をつなぐシーン、 服やスカートのしわ、靴を含む足元、 人物の背景などもとても大変でした。 そんなわたしの夢が終わったのは、 個別塾の講師として採用されたときでした。 それまでわたしは社会人になっても「丸文字」 (世代がばれちゃいますけど)で通してきました。 履歴書や職務経歴書は漢字がほとんどなので、 面接官もわたしが「丸文字の女」だということに 気づかずに、わたしは採用されました。 丸文字はこんな感じ。→ 「行き先表示カード」 これもよくわかる。→ 「イラスト&ポエム」 湾曲した文字は特に丸っこく書きます。 これに加えて「か」や「て」が濁るとき、 「か」の3画目の部分中央に濁点を重ねたり、 「て」の湾曲中央に濁点を重ねたり。 「お」は点の部分を湾曲部分に重ねたり。 「ね」と「わ」は縦棒を書いたあと、 点を縦棒の上部に乗せて、あと湾曲部分を書きます。 だから点と湾曲部分はつながっていません。 「ま」とか「ほ」は突き抜けないほうがかわいいです。 手紙だと最初の「〇〇ちゃんへ」の「へ」に なぜか濁点を重ねたりしてました(笑)。 それと漫画的表現で「あ」に濁点とか、 「え」に濁点とかもありました。 わたしは初出勤の日までかなり悩みました。 ひらがなはほとんどが丸い遊び文字なんです。 この文字でわたしは少女漫画を描いていました。 でもわたしは小中学生を教える先生になるんです。 この丸い遊び文字を使って生徒に 教えるわけにはいかないと思いました。 だから誰に言われたわけでもなく自主的に 文字を一般的なものに直す練習をしました。 たぶんこのときわたしの夢は終わりました。 女の子の文化は時代を映す鏡だと言われますが、 今の女の子にかわいいとされている文字を 実はわたしは知っています(笑)。だいぶ前に 「リップヴァンウィンクルの花嫁」のサントラCD を取り寄せてもらったとき受け取った注文伝票 → 「注文伝票と音楽CD」 わたしが名前と連絡先(電話番号)を書いたあと、 若い女性店員さんが必要事項を書き入れた文字、 これが今かわいいとされてる文字なんだって わたし勝手に思っているんです(笑)。 ある映画でも女子高生がこんな文字書いてたし。 舌足らずな感じがかわいいんだと思います。 |
わたしの夢もちゃんと終わりました。 今とても幸せです。 薄紅色の可愛い君のね 果てない夢がちゃんと 終わりますように 君と好きな人が 百年続きますように (「ハナミズキ」(一青窈)より) |