イブの贈り物


雪乃ってなんか、雰囲気ふわふわしてる。声のせいかなあ。かわいい。私が男の子だったら、ぜったい雪乃のこと彼女にしちゃうんだけどな。。

「ジャンケンポン!あいこでしょ!」「あーきょうも雪乃の家だー」「あはは」「3日連続だねー」私たちはクラスメート。前から仲良しだったんだけど、好きな男の子を教え合ってからもっと仲良しになったような気がする。私たちは家が互いに反対方向なので、学校帰りには、校門の前で長いこと立ち話をして、それでも話が終わらないときは、じゃんけんをして、負けたほうが勝ったほうの家まで話をしながらついて行くんだ。そして、家でしばらく遊んだあと、自転車で送ってもらう(二人乗り)。そんなことを平気でやってました。

「デートの予行演習しない?(笑)」「まだ告白もしてないのにー(笑)」「いいじゃん、いいじゃん」「たぶん男の子が右で、女の子が左だと思う」「じゃ、まゆち(私のニックネーム)左ね。私、Kくんになってあげる」「あ、カップルいるよ!あれー、あのカップル男が左だー」「別にどっちでもいいのかな?」

それからしばらくして、雪乃がときどき学校を休むようになりました。私が聞いたら、「最近めまいがするんだ。病院で検査してるの」って言ってました。そのときは私、あまり気にも留めなかったんだけど・・。




「雪乃、Mくんに伝えてあげようか?」「えーいいよ。恥ずかしいよ」

私はなんとなく、雪乃はもう




Mくんに会ったあと、雪乃は「まだ天国に行きたくない」って泣く。でも泣きやんだとき、ぽつりと雪乃は言いました。「でもイエスさまに会えるの楽しみなの」ニコッと笑いました。「え、イエスさまって?」

雪乃は聖書を見せてくれました。「なんか辞書みたい」




「私、雪になって、まゆちにゼッタイ会いに行くからね」雪乃はやさしく笑いました。


小鳥のさえずりで目を覚ました私。あれっ、夢?「雪乃・・」
雪乃のことが心配でした。飛び起きました。やっぱり雪乃には天国に行ってほしくなかった。「おかあさん、雪乃ちゃん大丈夫かなー?私、病院に行くよー」泣きそうになりながら言いました。「え?雪乃ちゃんって誰?」「何言ってんの、いつも学校帰り、遊びに来てたじゃん」私はムッとしました。「おかあさん、知らないよ」「もう、この子だよー」急いで学級名簿を持ってきて開きました。あれ・・?雪乃の名前がありませんでした。「えーなんでー!?」「途中から引っ越してきた子なんじゃないの?」「違うよ、最初からいたよ!あれー??」今度は日記帳を開いてみました。きのうは病院にお見舞いに行ったはずなのに、雪乃のことは何も書かれていませんでした。

「まゆち、おはよー」「あ、ゆいちゃん、ここの席、雪乃だよねー?」「えー、そこは前から空いてるじゃん」「えーウソだー」私は思わず座り込みました。「雪乃って誰?」「今、病気で入院してるでしょ?」「えー、このクラスにはそんな子いないよ」


雪を見上げる


その日珍しく東京に雪が降りました。なんだか雪乃がふわふわ雪になって、天国から降りてきてるような気がしました。やさしい雪でした。

「雪乃。夢じゃないよねー?私たち、親友だったよねー?」

街角で何かを配っていました。受け取ってみると、クリスマス集会の案内でした。聖書の言葉がひとつ書いてありました。

きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。(聖書)

きょうはクリスマスイブなんだね。雪乃は、クリスマスはサンタの日じゃなくて、イエスさまの生まれた日だって言ってたけど・・。この教会行ってみようか。


これは、うつで寝てたころ(2003年くらい)、おふとんの中で紙に書いたものです。ストーリーを肉付けするのが苦手な私は、その後、何度か、あいだを埋めようと試みましたが、結局、完成することはできませんでした。でもたぶん言いたいことはわかると思います。だから、今頃になって、未完のまま(最初に書いたときのまま)載せることにしました。少女マンガ家を夢見てた私の考えるストーリーは、イエスさまを信じてからは、このお話のように、神さまのことを伝えるものへと変化していきました。実はこのお話は、イラストが先なのです。イラストを見てて思い浮かびました。

イラストと同じコート


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